安養院について➂

2021年4月11日

安養院はほんとに小さくて貧しいお寺ですが、なんと、少し離れた場所に“山林”を所有しているのです。
まあ所有していると言っても、寺から離れていますし利用予定もないので、現地がどこなのか確認もせぬまま放置してきました。
でも、このコロナでアウトドアに目覚め自分専用のキャンプ場として山林を購入なさる方もいらっしゃると耳にして、にわかに興味が湧いたのでございます。正直に申せば、下心を持ちました。
で、古株のお檀家様に頼んで案内してもらいました。現地は山裾から少し上った場所で、広さは150坪ほど、整地してあって平らです。ただ平らは平らなのですが、天高く梢を伸ばした樹木が生い茂り、荒れ放題に荒れております。
そのどうにもなりそうもない藪を眺めて、「……なるほど」とひとりごち、目を伏せて踵を返そうとしたところ、一人の老婆が近寄って来るではありませんか。
聞けば、すぐ下の家に住んでいらっしゃって、屋根に覆いかぶさるように枝を伸ばした大木を見上げては、台風で折れて落ちてきやしないか、地震で崩れた崖もろとも樹に押し潰されるのではないかと日々、気をもんでいらっしゃるとのこと。
空を覆う樹々を見上げてまた、「……なるほど」と呟きます。
こうなったら仕方ありません。早速、業者に頼んで見積もり出してもらいました。
驚きました。樹木の伐採には、こんなにもお金がかかるものなのかと。重機を入れる道をつけ、樹をクレーンで吊って、寸断してゆきます。その費用ときたら数十万円です。
とはいえ、怯えるお婆さんをこのままにはしておけない。泣く泣く伐採をお願いした次第です。お陰様できれいな更地となりました。

これを機に、不要な山林の処分方法を調べてみたので参考までに載せておきます。
まず思い浮かんだのが、国や地方自治体に寄付してはという考え。財産が増えるのだからもろ手を挙げて歓迎されるものと思いきや、国だって市だって利用価値のないものを貰ったらりしないとのこと。そりゃそうですよ。今回のように出費ばかりかさむなんてことになりかねない訳ですから。
では売却は出来ないのか。山林買い取り業者のホームページで確認すると、もっと広い面積がないとお話にならないんだそうです。しかも材木になる樹が生えていたり、太陽光発電用地にできそうだったりと、何かウリがないと。こんな猫の額ほどの山では、とてもとても。
ならば独りキャンプ用地としてキャンパーに売るというのはどうか。それも炊事に便利な川が流れているなどの条件が整っていないと厳しいとのこと。なによりも自然を満喫するのが目的ですから、真下に民家の灯りが見える場所ではねえ。

今後、跡を継ぐ人がおらず廃寺になるお寺がたくさん出ると言われます。そうなれば、こうして放置された地所や境内地の問題だけでなく、伽藍そのものが危険な老朽家屋となってしまうところも現れるでしょう。そうなる前にどう処分してゆくのか、それとも再建するのか、住職の責任が問われています。