真言宗豊山派安養院(栃木県栃木市の寺院)

2020年12月11日

質問「法事の七回忌は、ナナ回忌と発音しますか? それともシチ回忌が正しい?」

回答「シチ回忌と発音して下さい」

理由「日本語のモノの数え方は二通りあります。『イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、シチ、ハチ、ク、ジュウ』と『ヒ、フ、ミ、ヨ、イツ、ム、ナナ、ヤ、ココノツ、ト』です。イチ……は中国語の発音が元になっていて、ヒ……は日本語です。
その使い分けは? 数える対象が字音語や固い響きの場合は中国音で、和語は日本音で数えるといたってシンプル。
では字音語と和語をどう見分けるのか? 漢字には音読みと訓読みがあります。音は中国語由来で訓は和語です。
例1.度をドと音読みしたら「イチド、ニド、サンド、シド(ヨンドではありません。真言宗には四度加行=シドケギョウという修行があります)、ゴド、ロクド、シチド(上方落語の演目に七度狐=シチドギツネがある)、ハチド、クド(真田幸村が幽閉されたのは九度山=クドヤマ)、ジュウド」となる。
度をタビと訓読みしたら「ヒトタビ、フタタビ、ミタビ、ヨタビ……(まぁ適当に)」となる。
例2.重をジュウと音読みしたら「イチジュウ、ニジュウ、サンンジュウ、シジュウ……」となる。
重をエと訓読みしたら「ヒトエ、フタエ、ミエ……ナナエ、ヤエ、ココノエ、トエ(十重二十重=トエハタエ)」となる。
以上をふまえて、回忌は字音語(かなあ?)まぁ少なくとも固い響きなのでシチカイキと発音するのが日本語的には正しいとなります。

余談「寅さんシリーズとして知られる映画『男はつらいよ』には法事のシーンがけっこう出てくるのでチェックしてみてください。32作『口笛を吹く寅次郎』では出演者は「ナナカイキ」と発音しています。ところが最新の50作『お帰り寅さん』では「シチカイキ」と言ってます。どっかのうるさい方から指摘でもあったのでしょうか?」

 


2020年12月7日

はじめにお断りしておきますが、
➀決まりがないことは、決まりはないと申し上げます。例えば「仏壇やお墓はどちらに向けるのが正しいのか?」といったご質問に対してです。
➁そのかわりご回答できるものについては、出典や根拠を示してお答えします。

では、こんな疑問から始めましょう。
質問「お仏壇屋に行ったら、葬儀の際の白木位牌は“○○霊位”だけれど、四十九日に差し替える本位牌は既に成仏したわけだら“霊”という字を外して“○○位”と書き改めなきゃだめだと言われたんだけど、本当ですか?」
回答「本当ではありません」
理由「仏事に使う位牌は、中国で生まれました。宋から元の時代に儒教をまねて作られたとされます。決まりごとの初出は元代の『禅林備用清規』で“新円寂○○上座覚霊”と記せとある。また、同時代の『幻住庵清規』には“○○禅師”あるいは“○○公”と書けとある。
日本で位牌が普及したのは江戸時代・綱吉のころで、『小叢林略清規(禅宗の葬送次第)』には“新物故○○霊位”と書けとある。でも実際の江戸時代の位牌を見ると“○○位”となっているものも多い。
というわけで、結論は“○○霊位”でも“○○位”でもどちらでも良いとなります。四十九日からは“○○位”でなければいかんという説に根拠はありません。霊と聞くと、どうしても霊魂や幽霊を思い浮かべてしまうのかもしれませんが、霊には尊いという意味が含まれているのです」


安養院のホームページを開設しました。

今後ともよろしくお願いいたします。