質問「お塔婆ってどんな意味があって、何のために建てるのですか?」
回答「お塔婆って何ですか?と質問されて、故人への手紙ですと答えるお坊さんが多いと聞きます。
たしかにお塔婆は表に宛名(戒名)があって裏には差出人名(施主名)がある、形式は手紙と同じです。うまい回答を考えたなと思うものの、それだけで終わらせてしまってはもったいない気がします。お塔婆には手紙的要素もありますが、実践修行の誓い及び手引きという意味合いも大きいのですから。
では、手紙的側面からお話しましょう。
塔婆は木の板棒ですから、柱の一種と見ることができます。だから塔婆を建てるとは、柱を建てるという行為と重なるのです。
そして古来より神事で重要なのは、柱を建てることでした。
諏訪大社のお祭り“オンバシラ”がまさにそれ。氏子たちが柱にまたがって急な坂を滑り落ちる“木落とし”が見せ場となっていますが、祭りの核心はそうやって長い距離を引いてきた柱を社の四方に建てることなのです。
あるいは伊勢神宮の本殿の床下には“心の御柱”という小さな柱が建っていると言われます。それこそが真の御神体で、表に見えている鏡や幣以上に大切なのだと。
柱は“はし”に通じます。橋が端と端をつなぐように社に建てた柱には天と地を、人と神をつなぐ働きが期待されるのです。
同じく塔婆を建てるという行為にはこの世と浄土、施主と故人をつなぐという意味が込められていると考えられます。確かにそれをして手紙と捉えることもできるでしょう。
ただ……お塔婆はただの板棒ではありませんよね。上部にギザギザと妙な切れ込みが入っています。あれこそがお塔婆のお塔婆たる所以なのです。という訳で、もう一つの意味については次回お話ししましょう。