質問「仏像について教えてください」
回答「仏教の開祖である釈迦牟尼仏からお話ししましょう。臨済宗や曹洞宗など禅宗のお仏壇にご本尊としてお祀りされます。
そのお釈迦様の身体には32の特徴があったというのは有名な話。完全無欠の偏平足だったとか、舌先が髪の生え際まで届いたとか、肩まで届く超々福耳だったなどなど。その中に大直身相というのもあります。尋常でなくデカかったというのです。
そこから生まれたのが丈六という仏像の規格でした。お釈迦様の身長とされる一丈六尺に仏像の大きさを合わせようというわけです。ちなみに坐像の場合は半分の八尺で丈六とされます。
ただ、ちょっと待って下さい。一丈六尺は十六尺でしょう、一尺は30.3㎝だから、お釈迦様の身長は……485㎝ッ! さすがにそれは。そんな巨人が托鉢に回ってきたらみんな逃げますよ。
ならば、仏像は実際の倍のサイズにしたのだという説を採ると、お釈迦様の身の丈は八尺となり=242㎝か。ぎりぎりありえなくはない。ありえなくはないけれど、プロレスラーのジャイアント・シルバでさえ230㎝ですからねえ。威圧感があり過ぎて、説法もさっぱり頭に入って来ないと思うなあ。合間に舌で生え際をお舐めになるわけだし。
こうなったら発想を変えましょう。そもそも一尺=30.3㎝という換算が違うのではないか。
尺という単位の起源は、古代中国にさかのぼります。字形は、親指の先から中指の先までいっぱいに広げた様子で、その長さは古代中国人も現代日本人もたいして変わらず18㎝くらい。もともとの尺は今よりずっと短かったのです。それは多くの度量衡の単位に言えることで、次代が下るにつれ徐々に長く大きくなってゆきます。人類は技術の進歩と共に自己評価をどんどん上げていったのですね。実際、中国に仏教が伝来した後漢当時の一尺は23㎝まで伸びていました。それをもとにあらためてお釈迦様の身長を測れば8×23㎝=184㎝ということになる。普通に大きいですが、尋常でなくデカいという表現にはあたらない。けど、渡辺謙や滝田栄くらいの身長ということでまぁ良いサイズ感ではないでしょうか。うん、決定!」